[1]ゆとりん@MVあ5l9jku3vtjc
2020/08/22 00:52
『夢印−MUJIRUSHI−』

要領が悪い男・鴨田は、
不幸が重なり
借金まみれになってしまった

妻は駆け落ちし、
娘と二人残された鴨田は
心中するために駅へ向かった

しかしそこで見つけた
不思議なカラスを追いかけるうち、
『仏研』という
謎の研究所にたどり着く

そこにいたのは
蝶ネクタイをしめた
キザで出っ歯の男

鴨田はその男に
これまでのことを話した

するとその男は
「ユーが自由になる方法があるざんす」
と言う

男が取り出したのは
ヨハネス・フェルメールの
『レースを編む女』…の贋作

男は昔話をした

「ビンセンツォ・ペルージャ

かつてモナ・リザを
盗んだ男ざんす

このモナ・リザの
行方がわからなくなっていた
2年の間に
面白いことが起きたざんす

モナ・リザの贋作が
高い値段で売れまくったざんす」

本物が行方不明になっている以上、
もしかしたら
贋作のように見えるそれが
本物かもしれないと
高い値段が付けられたのだ

そこで男は考えた

「もしルーヴル美術館から
『レースを編む女』が消えたら、
この贋作は
高く売れるざんす」

その話を聞いた鴨田は
舞い上がるが、
しかし娘のかすみは冷静で
「そんなの泥棒じゃない!」
と男を叱る

だが、男は
「ミーは盗むなんて
言ってないざんす

ほんの一瞬
本物に消えてもらうだけざんす

この贋作を売ったら、
本物は元通り返すざんす」
と答えた

続けて男は
「そう

ミーも泥棒なんぞと
言われたくないざんす

だからフェルメールの
『レースを編む女』を
持ち出せる方法を教えるかわりに
お願いがあるざんす

この石を
ルーヴル美術館に
返してきてほしいざんす」
と言う

そして男が取り出したのは、
かつて男が
ルーヴル美術館から
『借りて』きてしまった
エジプトの彫刻であった…



『盗む作品』は
漫画に限らず数多く存在するが

『返す作品』は
そうそう無いだろう

それがこの漫画だ

この漫画は元々
ルーヴル美術館が
漫画を『第9の芸術』に認定し、
(『建築』『彫刻』『絵画』
『音楽』『文学』『演劇』
『映画』『メディア』『漫画』)
ルーヴルと漫画のコラボを企画

日本の漫画家達が
ルーヴル美術館を題材にした
漫画を発表した
『ルーヴルNo.9
〜漫画、9番目の芸術〜』
に出品される…筈だった作品

しかし、この漫画の作者
浦沢 直樹先生は
この企画に声をかけられた当時
『BILLY BAT』を連載中で、
残念ながら参加できなかった

しかしBILLY BAT完結後の
2016年、
ルーヴルから再び声をかけられ、
めでたく発表されたのが
この作品である

フランスに縁の深い
あのキャラクターを登場させ
日本の漫画の
歴史の深さを感じさせつつ、
たった9話で見事にまとめあげた

全1巻と非常にお手頃

バンドデシネサイズの豪華版は全2巻
(バンドデシネ=
フランスのコミック)

この『芸術』を、
是非手にとって眺めてほしい

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